学生時代だったか、卒業してからだったか
アトリエから泣きながら飛び出してきた油絵科の女の子を見た 彫刻科の男の子が
「絵ぇ描くひとって、泣くねんな。」
と言ったことを思い出していた
絵を描くひとは泣く。
なぜなら絵を(なかでも特に現代絵画を)描くひとは常に問われているからだ
「お前は誰だ、そこで何をしている」と
そのように何ものかに問い詰められ 追い詰められて 泣きながら答える
だがその答えを常に疑い続ける
そういえばわたしはしばらく泣いていないな、と思った
問いに負けた者には死が、
闘いつづけた者にはいつか光があるだろう
この問いから逃げ続けた者の手に残るのは、
単なる人まねか、中身が空洞である作品の山だ。
わたしがこのごろ泣かないのは、春に1年ぶん泣いたからだ、
だがまた泣くときがやってくるのだろう。