金木犀のかおりにかんして、ひとはいろいろな思いをいだくようで、
この季節になると皆がくちぐちに金木犀 と言いはじめる。
わたしにとっては、金木犀のかおりというのは、
あつい季節がほんとうに終わるよとしらせてくれて、体をほっとさせてくれるかおり。
だけど、ここ数年、このかおりがただよいはじめると、うっすらと、何かおちつかない、
へんなイメージがうかんでくるようになっているのだった。
牛の頭の骨から金木犀のかおりがする って。
そんなはなし、どこから出てきたんだろう。
ほんとにそんなはなしがあったかな。
きいたような気はするけど、それはわたしの夢かもしれない。
それで、すなおに金木犀をよろこべない。
曇り雲のような不確かさがもやもやととりついてくるから、
真偽をたしかめることにしようと決心して、メールを打った。
わたし 「あのね、昔、牛の頭骨から金木犀のにおいがするから金木犀のにおいがきらい って言ってた?」
ねこさん「そんなんよう憶えとるな〜!すごい。」
わたし 「ああ その話わたしほんとうに聞いたんやね それ確かめたかったん。」
もはや、なんで牛の頭骨が金木犀のにおいだったのかも、
その頭骨がどこにあったものだったのかも、
ねこさんが金木犀のかおりがきらいだということも、どうでもよくなっていて、
ただその話をきいたのが実際にあったことだったかどうだったかだけが重要だった。
たぶん、10年くらい昔のはなし。
牛の頭骨と金木犀の組み合わせが、ラテン文学みたいでつよく印象にのこったらしい。