ぴたーっと、鏡みたいにしずかな湖、っぽい日だ。
と、朝、おもった。
きのうから、新月だった。
事務所のドアをあけたときも、そんな空気だった。
あれは、社長がその年齢のわりには非常に豊かな包容力を発揮しているせいだ
とわたしはいつでもおもうのだけど、
いつものお客さんも、あたらしいお客さんも、
たいてい、社長に会いに来たひとは、誰もが、
本題のあとにぴろぴろっと、本音やら秘密やらをうちあけて帰っていくのである。
「僕、リコンしたんですよー こないだ。」
とかいう話をしていくひともなかにはいて、
そういうとき、わたしは自分の存在感を瞬時に消すようにしている。
ときどき、みえないところに回って吹きだしてしまっていることも、ある。