ねえパパ、こんなことになるくらいだったらさ、あたしときどき思うんだけど、あの馬をあたしのために生かしておいてくれた方が安上がりだったと思わない?
おまえが何の話をしてるんだか、よくわからんな、と彼。
デンジャラス・ダンのことよ。あの晩、あたしに話してくれたこと覚えてるでしょ。彼が死んだあとで。
おまえには何も言わなかったぞ。
そう、それならいい。たぶんあたしは夢見てたのね。あたしはベッドにいて、起こしたのは彼なんだし、そんなことは初めてじゃなかったもの。だけど今は、安定剤のまされて、夢遊病者のような感じがする。だから、それがほんとうには起こらなかったことだっていうのも、信じられるみたい。たぶん、あたしはいろーんなことを夢見たんだと思う。あたしが、あたしの人生で起こったと思いこんでるようなことを。あたしがやったと思ってることを。あたしにふりかかったと思ってることを。そうだとしたら、最高じゃない?あたしは、人生の90パーセントはただ夢を見てるだけ、そう思っていたいのよ。
(ジェイ・マキナニー 著 宮本美智子 訳 「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」1988年)