展覧会を3つみに、京都へ。
あかねとあきらのおとうとである、弥太郎くんの個展も、みた。
弥太郎くんの髪は一か所だけ、ぴーんと立っていた。
セットしているのじゃない。きっとあれは寝癖だとおもったが、
その様子がけっこう自然なので、指摘するのもわすれ、
弥太郎くんの世界で弥太郎くんと話をした。
「きのうね。ここで知り合いにライブをしてもらったんですけど、
なんか、僕も歌わされてしまって。
僕、人前で歌うなんて、ほんとうにだめだっていうのがわかって、
それで、今日はもう、ぼろぼろなんですけど」という弥太郎くん。
ああ、それで、髪が。と思って、でも、だまっていた。
弥太郎くんはいつも、絵の他に、日記の様な手帳を展示していて、
そこにかかれている言葉とは、たましいのレベルでふれあえる気がするので、
毎回それを読むのをわたしはたのしみにしている。
さて、それにしても、あかねとあきらと弥太郎くんの3きょうだいの関係は、風変わりだ。
弥太郎くんの絵にかならずといってよいほど登場してくるうさぎがいる。
弥太郎くんのはなしによると、
あれは、もともと、長女のあかねがうさぎを好きだったのだが、
それを弟のあきらがひきつぎ、
それをまた、その弟である弥太郎くんがひきついだというのだ。
うさぎの人形を、とかいう話ではない。
「うさぎを好きである」ということを、ひきつぐのだ。
そして、「うさぎを好きである」ということを、下のものにゆずるのだ。
それで、弥太郎くんが今、うさぎを描きまくっている。
「でもね、今回は、姉が、僕の絵をひとつ、買ってくれたんですよ。この、ちいさいの」
と言ってうれしそうにしている、弥太郎くん。
あかねが買ったという、小さい絵。
うさぎの絵だ。
ううむ。