満月。
床掃除や夕飯作りをして、お風呂にはいったら、じんましんがさかんにでてきた。
なかなかおさまらない。
あやねとくまさんの展覧会のオープニングパーティに、ずいぶん遅刻して着く。
たくさんの、知った顔。
わたし、ちょっと緊張している。パーティにはよく行くけれど、ほんとうは緊張しているのだ、いつでも。
こころをしずかにおちつけて、あやねとくまさんの作品をみる。
わたしのあの朗読がくっついている作品をみる。
あやねとくまさんのすごいところ、すきなところは、
大掛かりなことをしないで、ちいさいところから、
とてもおおきくふかく、心にひろがる世界をつくりだしてくところだ。
ひさびさに、青山さんに会う。
わたしの個展の撮影をしてもらったのが春だったから、もう半年ぶりだ。
あいかわらず、髪を無造作にのばして、ひっそりしているのに目立っている。
「青山さん、こんにちは」
「ピー子、ひさしぶり。」
「お元気ですか?」
「うん、元気。・・・・実は、ピー子に話すことがあって。」
あ、きたな と思って、わたしは両足をそろえて立った。
「実は、夏に引っ越しをして、それで結婚したんです」
「それは、おめでとうございます」
ひそやかにあたまをさげあうわたしたち。
淡々と話す青山さんに、奥さんの年齢をきいたらすこし赤くなった。
その後何やかや、青山さんの新居のことやら、
そのほかちょっと興味深い提案もあり。
「では、ちょっとほかの人にも、(結婚の)報告をしてきます」とゆるりゆるりと歩いてく青山さんを
「いってらっしゃい」と見送ると、すぐにギャラリーの閉まる時間がやってきた。
このところわたしは外向きにうごきまわることがおおくて少しつかれていたので、
「僕、せなあかんことあるし、今日は早く帰るわ」というねこさんに便乗して、タクシーに乗せてもらった。
ねこさんも、もうすぐ新居へ引っ越すのだ。
河原町から電車に乗る。
ワインを飲んで酔っぱらっているふうのねこさんは、
「昨日は何やっけ、オバハン4人でご飯行ったん?あ、オバハンとちゃうか、中年って言うとったっけ。」などと言う。
わたし 「そう。社長とカオリちゃんは高校が一緒やったんやね。
美術系の高校生ってやっぱり朝から『朝デッサン』とかするらしいね、すごいね」
ねこさん「美術系とちごても、僕も朝から油絵とか、描いとったで」
わたし 「ねこさん高校のとき、どんな絵描いてたん?」
ねこさん「うーん、好きやったんは、松本竣介。あと、フランシス・ベーコンも好きやった」
わたし 「あ、フランシス・ベーコンは好きやったな。でもその2人、ぜんぜんちがうな」
ねこさん「ええねん、そんなん。せやけど、松本竣介は回顧展、やらへんな。
佐伯祐三とかは、しょっちゅうあんのにな」
わたし 「そこの佐伯祐三と松本竣介のちがいって何なんかな」
ねこさん「うー、ピストルズとポップ・グループのちがい、みたいなもんちゃうか。」
わたし 「ふーん。なんか、よくわからんが、うまいたとえのような気がする」
ねこさん「松本竣介はいい。だいたい、名前がええやん、松本竣介て」
ねこさんは、「寝ていい?」と言いおわるかおわらぬかのうちに、寝てしまった。
わたしは横でずっと、田辺聖子を読んでいた。
途中でねこさんは一瞬目をさまして、「本、読んだはる。」と言って、また、寝た。
梅田についてもまだ眠っていたので、「つきましたよ。」と起こした。
酔ってはるなあ と思いながら、わかれた。